YUKIWORLD |
第4景 幸せな妻の図
二日に一度くらいは夫も飲みにやって参りまして、お勘定は私に払わせて、またふっといなくなり、夜おそく私のお店を覗いて、 「帰りませんか。」 とそっと言い、私も首肯いて帰り支度をはじめ、一緒にたのしく家路をたどる事も、しばしばございました。 「なぜ、はじめからこうしなかったのでしょうね。とっても私は幸福よ。」 「女には、幸福も不幸も無いものです。」 「そうなの? そう言われると、そんな気もして来るけど、それじゃ、男のひとは、どうなの?」 「男には、不幸だけがあるんです。いつも恐怖と、戦ってばかりいるのです。」 「わからないわ、私には。でも、いつまでも私、こんな生活をつづけて行きとうございますわ。」 |
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